球体関節人形の作り方
 12・首関節を作る


ここからが正念場です。関節を作ります。
関節を作る上で大事なポイントは、関節はパーツ同士で支え合っているのではなく、
球体と受けで支え合っているということを知っておくことです。
つまり球体と受け以外の関節の外見は飾りに過ぎません。実際関節として機能しているのは球体と受けだけです。
また、球体はあまり小さすぎても機能しません。かといって大き過ぎても格好が悪いので、
設計図を描く時にバランスを考えておくことが大事だと思います。

 まず関節に使う球を作ります。製図に合わせて作りますが、
 実際に作った手足とのバランスも考慮して作っていって下さい。
 芯に使う発泡スチロールは10、12、15、20、25、30、40ミリがあれば
 60センチ程度の人形には間に合います。
 2〜5ミリ刻みですが、意外とこの差が大きいので、
 以上のサイズは揃えておくと良いと思います。
 あとあまり沢山球を作るとか、とても大きな球を作るのでしたら
 型を取って作ってしまった方が楽だと思います。
 発泡スチロールから球を型取りして作る方法はリンク先の虎目式人形庭園
 で紹介されています。素人でもお手軽にできそうですし、便利そうです。

 製図の球の直径を計ります。

 今回約60cmの人形で、
 股関節の球が44mm×2個、
 肩関節の球が28mm×2個、膝関節の球が28mm×2個、
 肘関節の球が18mm×2個、足首の球が18mm×2個、
 首関節の球が30mm×1個、
 手首の球が15mm×2個
 の計13個を作ることになります。

 大きさが合うものは石膏型で作ってしまいます。
 石膏型での球体の作り方はこちら

 型が使えない大きさの球は、発泡スチロール球を粘土で包んで作ります。
 (もちろん全部の球をスチロール芯で作っても大丈夫です)

 球の粘土の厚さは最低5ミリは必要です。
 なので作る予定の球より直径で1cm小さい発泡スチロール球を芯に使います。
 とても小さい球を作る時は、芯を入れなくても良いです。

 延ばす時のガイドは割り箸や鉛筆など色んなものが使えます。
 5mmの厚みにしたかったら高さ5mmのガイドを使います。
 8mmとか中途半端な厚みが欲しい時も、ガイドの厚みを変えることで対応できます。

 左が粘土で包んだもので、右がその芯です。

 球を包む時はこまめにハサミで切りながら包むと上手く出来ると思います。

 同じ大きさの球は、左右の大きさがきちんと揃うように作ります。

 丸めたらいったん乾かして、それから凹んでいる部分を粘土で埋めて、
 なるべく球に見えるように形を整えます。
 それをまた乾かして、スポンジやすりで磨いて真の球体にしていきます。
 最初は荒目で、次は細目で磨きます。
 くるくる回しながら膨らんで見える所を削っていけば、球になります。

 妥協しないでなるべく真の球体になるように時間をかけて作ります。
 関節の球を正確に作っておかないと、後で関節を作る時にとても苦労します。

 どの球がどのパーツのものか、鉛筆で書いておきます。

 更にお菓子の箱に分別しておくと分かりやすいです。

 球が出来たら、鉛筆で円形に印をつけて、彫刻刀で彫って穴をあけます。
 私は平刀や丸平刀で穴をあけています。

 あける穴の大きさは、くっつけるパーツの空洞の大きさより大きくならなければ
 どれだけ大きくても構わないです。
 穴をあけたら、中のスチロール芯を出します。
 中にひび割れが見られる場合は、柔らかい粘土で埋めます。

 まず、首の関節を作ります。

 首と球をくっつけてみて、製図と高さが合わないようなら
 首の上を彫刻刀で削ります。

 首が削れたら、乾いている部分を水で濡らして棒状に延ばした粘土をくっつけます。

 そこに首の球をはめ込みます。

 球に正中線が通るように調整します。

 周りの粘土を整えます。

 球の位置がズレてしまいそうだったら、上の状態でいったん乾かして、
 乾いてから形を整えます。

 次は頭の方に球体の受けを作ります。

 顎から首までの距離が長くなりすぎないようにしてください。
 この辺は間違えやすいので気を付けます。

 穴の周りを水で濡らして、棒状に延ばした粘土をくっつけます。

 首のパーツの方にラップを被せ、首を載せて押し込みます。

 この時、首の高さを好みで調整します。

 はみ出た余分な粘土は切り取ります。

 受けの表面はボコボコになると思いますが、ひとまず乾燥させます。
 乾いてから柔らかい粘土で凹凸を埋めます。

 乾燥したら、内側からも粘土を盛って補強しておきます。

 更に後頭部の形も整えます。

 横から見るとこんな感じ…

 首の関節となだらかに繋がるようにします。

 こうすると横顔が綺麗になると思います。

 次は頭の中に針金を通して、ゴムを引っかける場所を作ります。

 側面の中心線、両耳の上に穴をあけます。
 黒い点に見えているところです。
 穴の位置が左右で合っているか確認します。

 ルーターで穴をあけます。
 ルーターが無い時はキリで穴をあけます。

 頭の横幅より少し長めにステンレスの針金を切ります。
 太さは♯16。なかなか曲がらない太さです。
 鉄の針金は錆が出てきて後で汚くなるので、必ず錆びない素材を使って下さい。

 針金を切ったら中央をラジオペンチでつまんで、両側から押します。

 中央に輪を作ります。
 他の部分は真っ直ぐに伸ばしておきます。

 曲げた針金を片方ずつ入れて穴に通します。

 余分な部分に印をつけて、針金の先が穴の中に両方入る位置で切ります。
 この時、針金の先が穴から出ないようにします。

 切ったら、内側から瞬間接着剤で固定します。

 外側の穴は粘土を詰めて隠します。

 ゴムを通した時にこの針金には真下に向かって力がかかります。
 なので真下の部分にたくさん粘土を盛って補強しておきます。
 赤く線を引いた部分です。

 首の方には彫刻刀で丸い穴をあけておきます。
 球体の部分はほとんど隠れてしまうので結構大きな穴をあけても大丈夫です。

 首の球の中心に針金を通しておきます。
 これは後でゴムを通した時に力がかかるのを分散して、関節の傷みを防ぐためです。
 首の場合は頭が変な方向に曲がるのを防ぐ効果もあります。
 これからくっつける球には全て針金を通すことになります。

 側面から見て、球の中心に穴をあけます。

 針金を赤線のように通します。
 頭に針金を入れた時と同じように、中から瞬間接着剤で固定します。
 外側の穴も粘土を詰めて隠します。

 上から見るとこんな感じになっています。
 これで首の関節は完成です。

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