球体関節人形の作り方
 14・磨き


 磨きの前に人形に使う本命の眼球を用意します。これは手作り眼球。

 首の穴から目の裏側に粘土を盛って、眼球をくっつけます。
 グラスアイの場合は指に粘土を一塊のせて、その上にグラスアイをくっつけ、
 そのままアイホールにはめ込んで、粘土をグラスアイの周りにおろしてくるようにして
 固定します。やってみれば簡単ですがどうしてもできない方は頭割ってるうちに眼球入れて
 固定してしまってください。その後やすりがけとか塗装とかしますから、
 眼球の表面にはマスキングテープやマスキングゾルを貼らなければいけません。
 マスキングしてると目の周りの処理が大変になりますので、
 目は最後に入れるのがお薦めです。


 黒目の位置や眼球自体の深さが決まったら、目を固定している粘土を乾かします。
 乾いたら眼球は外しておきます。
 眼球のはまっていた土台は、後で仕上げ前に眼球を入れる時のガイドになります。

 次は割っていた頭を繋げます。
 境目の部分に粘土を盛っておきます。

 頭を合わせ、押し付けてくっつけます。
 外側からも繋ぎ目が残らないように綺麗に整えます。

 ここまできたら後は細部の詰めをします。

 組み立てた人形を見て、粗を探します。

 塗装に入ったら修正できないので、細部には出来る限りこだわります。
 顔など左右非対称でも味になって良い、と思ったりするのですが、
 時間を置いてから見ると非対称なのがとても気になってきます。
 作っている時は見慣れているから気にならないのです。
 同じように、見慣れていない他人から見れば非対称なのはすぐ分かってしまいます。

 実物を見ただけでは粗が探しきれないので、組んだ時の写真を印刷して
 赤ペンで修正を入れています。左は上の写真に実際に修正を入れた時のもの。

 この時は膝の関節がしっくりきていなかったので微妙にO脚になっています。
 設計図に合わせて粘土を足して修正しました。

 修正予定図の通りに修正したもの。

 私が細部の詰めで気にしている所は

 ・表面に変に凹んでいる所がないか
 ・パーツの対称性
 ・ゴム溝の深さ、穴の対称性
 ・関節の受け(外観)の対称性
 ・球の出方の対称性
 ・関節の曲がり具合の対称性(大腿が同じ角度まで上がるか等)
 ・左右の手、足の指の長さ、幅の対称性
 ・関節球の付け根に、球をくっつけた時のデコボコが残っていないか

 などです。

 変化三段階。
 膝下がいつの間にか設計図より短くなっていたので
 少し伸ばしました。
 あと手が小さかったので少し大きくしました。

 何が変わったんだ!?って感じもあるかもしれないですが
 ぱっと見で変わっていなくても細部の詰めは大事です…
 実物を間近で見られても大丈夫なように、
 裸の状態で出来る限り粗を直しておきます。

 次に、パーツの表面を綺麗にするためにクロスクレイを塗ります。

 塗る時に使う筆は立てかけてある大きさくらいのものです。
 安いもので結構ですから大きい筆を用意します。

 クロスクレイの中身です。
 クロスクレイはラドールを水に溶かしてできるように見えますが、
 実は全く異質なものなので代用はしない方が良いと思います。

 クロスクレイは例えるなら泥のようなものです。
 細かく造形する力はないですが、細かい凹みを埋めるのに役立ってくれます。

 クロスクレイを別の容器にとって、4割ほどボンドを混ぜて使います。

 関節球を持って球以外の部分から塗っていきます。

 パーツの中の針金に∫こんな形の針金を引っかけます。
 針金を持って、最後に球の部分を塗ります。

 ブツブツしてるのでびっくりすると思いますが、後で全部消せるので大丈夫です。

 頭のパーツは、針金の先を曲げたものを、頭の中のSカンを引っかける所に引っかけます。
 そのまま顔や頭にクロスクレイを塗り、最後に首の受けの所を塗ります。

 ∫こんな形の針金。
 何本か作っておくと良いです。

 全部ぶら下げて乾かします。

 乾いたら、スポンジヤスリのファインで磨いてブツブツを消します。
 そのあとスーパーファインで磨きます。
 表面に粒々が残らないように綺麗に磨きます。

 手足の指の間や耳の裏を磨くのには布ヤスリの400番を使います。
 折って使うと細かい所まで磨けて便利。

 全部磨いたら、全ての受けにゆとりを作る作業をします。
 この後下地塗りをした時に厚みが出て、関節が入らなくなってしまうからです。
 これは必ずしなければいけない作業です。

 でも実は一番嫌いなところです…

 大腿の受けにゆとりを作ったところ。
 余裕をもって動くようにしておきます。

 向かって左・削った後
 向かって右・削る前

 球の入り方が違うのが分かるでしょうか…
 このくらいの感じでゆとりを作ります。

 このゆとりが実際どれくらいかが悩み所だと思いますが、
 私は画用紙が二枚入る程度かなぁと思ってます。
 油絵の具で厚ーく塗る場合はもう少し必要です。
 余裕ありすぎたら下地を厚塗りして調整できるので、
 多めに作っておいた方が良いかも。
 あとで受けに布を貼るのでその厚みも考慮してください。

 膝のゆとり調整はかなり気を遣います。
 もし合わなくなってしまった場合、影響が大きいからです。
 (他の関節は球がちょっとくらいはみ出ても大丈夫だけど、
  膝は関節がぴったりしていないと自立できないし酷いと膝も曲がらなくなる)

 この辺の調整の難しさが嫌いの理由です。。。

 全部磨いたら、クロスクレイで埋まってしまった細かい部分を彫り起こします。
 二重の線や手足の爪など。
 写真の彫刻刀は三角刀の一番小さいやつです。刃先の一辺が2ミリくらい。

 表面がつるつるになりました。
 今回使った道具はスポンジヤスリファインスーパーファイン、布ヤスリの400番、彫刻刀です。

 スポンジヤスリは一枚ずつ買っておけば、人形一体作るのに十分保ちます。
 丈夫だし、掃除機で粉を吸い取ればすぐ復活するからとても便利。
 曲面も磨きやすいから、紙ヤスリの使う番などで悩むより、
 スポンジヤスリ一式(ミディアムファインスーパーファイン)を
 買ってしまった方が良いと思います。

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