小野の小町、几帳の草紙を読んでいる。
そこへ
黄泉使れる。

泉の使は色の黒い者。
 し
かも耳はである。

小町 (きながら)です、あなたは

使 泉の使です。

  たしは一天万乗でも容赦しない使なのです。

小町 あなたはを知らないのですか?
   わたしが今
んで御覧なさい。深草の少将はどうするでしょう?
   少将はわたしの死んだことを聞けば、きっと
き死に死んでしまうでしょう。

使 
き死が出来れば合せです。とにかく一度はされたのですから、

……かしそんなことはうでもよろしい。さあ地獄へおしましょう。

使 何、獄も考えるほど、いところではありません。
  昔から名高い
人や子はたいてい地獄っています。




芥川龍之介「二人小町」より

2007年
56cm
ラドール・レーヨン・自作の目・布等

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